認知モードの言語間比較
川端康成の小説、『雪国』の劈頭の文は、「国境の長いトンネルを抜けると、雪国で
あった。」というものです。ところが、エドワード・サイデンステッカーによるこの
文の英訳は、The train came out of the long tunnel into the snow country.
となっており、「意訳」どころか、根底的に違った文になっています。なぜでしょう
か。近年、認知言語学とよばれる潮流の研究では、こうした差異は、事態を言いあら
わすとき、言語によって好まれる視点のとりかた、すなわち、「認知モード」が違っ
ていることの反映であるという考えかたがなされます。この講義では、認知モードに
はどのようなものがあるのか、そして、日本語、英語、フランス語の比較にもとづ
き、これらの言語に特有の認知モードのありかたを、さまざまな現象に即して説明す
ることを試みます。このポイントをおさえることで、外国語学習においても、言語間
の差異を意識的に乗り越えられるようになるかもしれません。
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